「若手社員が仕事の相談をしてこない」
「考えてから動いてほしいのに、すぐに答えを求められる」
「指導しているつもりなのに、若手からは“感謝や承認がない”と言われる」
若手社員の育成やマネジメントに関わるなかで、こうした世代間のすれ違いを感じたことはないでしょうか。
こうした問題は、しばしば「世代による価値観の違い」として片づけられます。しかし、本当にそれだけが原因なのでしょうか。
若手と管理職の間に生まれるギャップの背景には、会社が双方に求める役割の曖昧さや、育成・対話に使える時間の不足があるのかもしれません。
今回は、2026年7月31日に開催された「MeCoFaラボ」の内容をもとに、職場の世代間ギャップが生まれる背景と、その解消に向けて企業や管理職ができるアプローチを解説します。
世代間ギャップは価値観の違いだけでは説明できない
職場の世代間ギャップというと、上司が若手社員に対して「考え方が分からない」「自分たちの頃とは違う」と感じる問題として捉えられがちです。しかし、ギャップを感じているのは上司だけではありません。
MeCoFaラボでは、龍谷大学が2022年に行った調査を紹介させていただきました。
企業に勤める上司と部下1,000人を対象に実施した調査では、職場の上司・部下との間にギャップを「とても感じている」「やや感じている」と回答した割合は、部下で51.6%、上司で44.8%でした。部下の半数以上、上司も半数近くが、相手との間に何らかのギャップを感じていることになります。

龍谷大学「全国の上司・部下1,000人に聞く『世代間ギャップ』調査」
この結果から分かるのは、世代間ギャップが、上司から部下を見たときだけに生じる一方向の問題ではないということです。上司が「若手社員の考え方が分からない」と感じている一方で、部下も「上司の考え方や期待が分からない」と感じています。ギャップは、どちらか一方だけに原因があるのではなく、双方の認識や期待のずれによって生まれています。
ただし、本人たちがギャップを感じているからといって、その原因をすべて「世代の違い」で説明できるわけではありません。
MeCoFaラボに参加された企業様からは、上司と部下という世代間の違いだけでなく、同じ若手世代の中にも、個性や価値観による「横のギャップ」もあり、ひとりひとりに合わせていくことの難しさについての意見が出ました。

たとえば、同じ年に入社した若手社員でも、会社や上司から求められる役割に応えることを重視する人もいれば、自分のペースや納得感を大切にしながら働きたいと考える人もいます。年齢や入社年次が同じだからといって、仕事に求めるものや成長に対する考え方まで同じとは限りません。
実際に、マイナビが2026年に実施した正社員向け調査マイナビ「ライフキャリア実態調査2026年版」では、20代・30代の回答が「稼げるなら残業してもよい」と「稼げても残業したくない」にほぼ半々で分かれました。一方で、20代の59.1%が「昇進したい」と回答し、昇進意欲は全世代で最も高くなっています。
この結果からも、「若手は仕事より自分の時間を優先する」「今の若手には昇進意欲がない」と、世代だけで一括りにすることの難しさが分かります。同じ20代の中にも、収入を優先する人、働く時間を重視する人、昇進を目指す人、自分に合った働き方を求める人がいます。
こうした同世代内の違いが表れやすくなった背景については、教育や社会全体が個性を尊重する方向へ変化してきたことも関係しているかもしれません。
日本の教育政策では、1980年代以降、「個性重視の原則」が掲げられてきました。その後も、一人ひとりのよさや可能性を伸ばす「個に応じた指導」が進められ、現在は、興味や関心、学習進度、キャリア形成の方向性に応じて、自分で学び方を調整する「個別最適な学び」が重視されています。
もちろん、教育の変化だけで若手社員の仕事観の違いを説明することはできません。家庭環境や雇用環境、働き方の選択肢、インターネットやSNS、コロナ禍など、さまざまな社会変化が影響していると考えられます。
それでも、一人ひとりの個性や選択を尊重する価値観が広がるなかで、同じ世代だから同じ考え方を持つとは限らない、という見方は、若手社員と向き合ううえで重要です。
今の職場では、若手社員とベテラン社員の間にある世代による縦のギャップに、同じ世代の中にある個性や価値観の横のギャップが重なっています。この二つの軸によって、職場のすれ違いは、単純な世代論では捉えきれないほど複雑になっているのです。
だからこそ、「最近の若手はこうだ」と世代で相手を判断するのではなく、目の前の相手が何を大切にし、仕事や自分の役割をどう捉えているのかを、対話を通じて確かめる必要があります。
世代間ギャップが放置される背景にある、育成時間と指導者の不足
若手社員と管理職の間にあるギャップは、価値観の違いだけから生まれるものではありません。相手の考えを知り、互いの認識を確かめるための時間や、その対話を支える人材が不足していることも、ギャップを広げる要因になります。
東京商工会議所が2024年に企業の人材育成担当者を対象に実施した調査では、Z世代の若手社員を指導・育成する際の困りごととして、34.4%の企業が「若手社員の価値観や勤労観が分からない」と回答しています。
一方、若手社員の指導・育成に関する企業側の課題としては、38.2%が「業務繁忙等により、指導・育成にかけられる時間が不足している」、34.7%が「若手社員が気軽に相談できるメンターや、OJTの指導役となる社員がいない、または不足している」と回答しています。東京商工会議所「企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員に対する意識調査」
この結果から見えてくるのは、企業が若手社員のことを「分からない」と感じている一方で、分かるために必要な対話の時間や、その役割を担う人材も不足しているという状況です。
対話の機会が少なければ、若手社員が仕事に何を求めているのかだけでなく、会社が若手社員に何を期待しているのかも十分に伝わりません。管理職やシニア層が「まずは自分で考えてほしい」と思っていても、若手社員は「どこまで自分で判断してよいのか分からない」と感じているかもしれません。
反対に、若手社員が質問するタイミングを見計らっているうちに、上司からは「相談してこない」「主体性がない」と受け取られることもあります。対話が不足すると、互いが相手の言動を自分の価値観だけで解釈し、世代の違いとして片づけやすくなります。
この調査から見えてくるのは、世代間ギャップは個人同士の相性や価値観だけの問題ではないということです。
これまで飲み会や食事などの業務外の交流が担っていた相互理解の機会は、仕事と私生活の境界やハラスメントへの配慮からつくりにくくなっています。
その一方で、それに代わる対話を、業務の中で誰が、いつ、どのように行うのかが定まっている企業はほとんどありません。
だからこそ、職場の世代間ギャップを考えるうえでは、対話の機会を確保するだけでなく、企業が若手社員と管理職・シニア層に、それぞれどのような役割を求めているのかも見直す必要があります。

役割や期待することが曖昧になっていないか
職場で起きる世代間のすれ違いは、若手とシニアの価値観の違いだけが原因とは限りません。
企業が若手・管理職・シニア層に何を期待し、具体的にどのように行動してほしいのかを十分に共有できていないことが、認識のずれを生んでいる可能性があります。
会社は、若手社員には「主体性を持って仕事に取り組んでほしい」と考え、管理職やシニア層には「後進を育成してほしい」と考えています。
しかし、どこまで若手自身に考えさせるのか、シニア層は何をどのように教えるのかといった、具体的な役割や仕事の進め方までを明確にすることは難しいのではないでしょうか。
その結果、若手社員は質問しても十分に教えてもらえないと感じ、「上の世代は教えてくれない」と受け取ります。
一方、管理職やシニア層には、若手社員が自分で考える前に正解を求めているように見え、「若手は受け身だ」という印象が残ります。

- 若手社員:「教えてくれない」
- 管理職・シニア層:「自分で考えない」
- 会社:「若手には主体性を、シニアには育成を求めたい」
つまり、問題は世代そのものではなく、互いに何を期待されているのか、どのように役割を果たせばよいのかが分からないことにあるのかもしれません。
違いを持ち寄れる組織へ
職場の世代間ギャップは、単なる年齢や価値観の違いだけで生まれるものではありません。同じ世代の中にも考え方の違いがあり、さらに、育成に使える時間や人材の不足、会社が求める役割の曖昧さが重なることで、すれ違いは複雑になっています。
こうした状況で、「最近の若手は受け身だ」「上の世代は教えてくれない」と相手を決めつけても、問題の解決には辿り着けないかもしれません。
必要なのは、どちらが正しいかを決めることではなく、それぞれが何を見て、何を感じ、どのような期待をしているのかを言葉にすることかもしれません。
個人間の努力だけに任せるのではなく、会社も「若手に何を任せたいのか」「管理職やシニア層にどのような育成を求めるのか」を明らかにする必要があります。
そのうえで、それぞれに見えている現場や違和感を持ち寄り、組織間でそれぞれがどのように関わり合うのかを、自分たちの言葉で問い直していくことが大切です。
あなたの会社では、若手と管理職・シニア層に何を期待し、その期待をどこまで言葉と行動にできているかを、一度振り返ってみませんか。
